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Healthtech Innovation Day 2025 開催報告

東京大学医学部附属病院 トランスレーショナルリサーチセンター バイオデザイン部門(以下、東大バイオデザイン)は、「Healthtech Innovation Day 2025~ヘルステックを日本の基幹産業にするためには、何が必要か~」を開催いたしました。

本イベントは、医療機器およびヘルスケア関連の研究者、スタートアップ企業、大企業、投資家、アドバイザーなど、多岐にわたる関係者が集い、交流し、エコシステムを構築することを目的として開催いたしました。

Healthtech Innovation Day2025 -ヘルステック-を日本の基幹産業にするためには、何が必要か

開催概要
開催日:2025年3月4日(火)
場 所:東京ミッドタウン八重洲カンファレンス
4階メインカンファレンス1+2 5階イベントスペース・スタジオ 来場数:304名(事前登録617名)
参加者:企業、アカデミア、官公庁、金融機関、コンサルタント、医療機関等

イベントの目的と背景

東京大学バイオデザインは、スタンフォード大学のバイオデザイン手法を日本に導入し、11年にわたり人材育成とスタートアップ創成支援を行っています。本イベントは、その活動の一環です。参加者間のネットワーキングを促進し、新たなコラボレーションの機会を創出するために企画されました。

主なプログラム概要

  1. 開会挨拶: 東大バイオデザイン 部門長の挨拶に始まり、イベントの目的と参加者への感謝が述べられました。
  2. 来賓挨拶: 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)より、官民による若手研究者発掘支援事業(以下、若手事業)、次世代ヘルステック・スタートアップ育成支援事業(以下、SU事業)に関する説明と、本イベントへの期待が表明されました。
  3. 関連事業の説明: 東大バイオデザイン担当者より、若手事業、SU事業における支援内容の紹介が行われました。
  4. パネルディスカッション: 各分野のテーマごとに、専門家によるパネルディスカッションが実施されました。
  5. 基調講演: エドワーズライフサイエンス社のチーフサイエンティックオフィサーTodd J. Brinton様による、バイオデザインメソッドを活用したメドテックスタートアップのEXIT戦略に関する講演が行われました。
  6. 研究発表/ピッチコンテスト: 若手事業採択者による研究発表およびSU事業採択者ピッチコンテストが実施され、最新の研究成果や技術が紹介されました。
  7. ポスター展示: 研究者・起業家によるポスター展示が行われ、交流が促進されました。
  8. 表彰式とネットワーキング: ピッチコンテストの表彰式後、参加者間のネットワーキングの機会が設けられました。

パネルセッションの概略

パネルセッション1:各省庁が考えるヘルステックSUへの期待

パネリスト

雪田 嘉穂様(経済産業省)
廣瀬 章博様(文部科学省)
澤田 拓哉様(厚生労働省 )

各省庁が連携し、それぞれの強みを活かすことで、スタートアップの課題に総合的に対応できる可能性が示されました。グローバル市場を見据えた事業展開の重要性や、海外進出における課題と支援の必要性についても議論がありました。さらに、大企業とスタートアップの連携が成長の鍵となること、そして具体的な成功事例が紹介され、その有効性が共有されました。

パネルセッション2:「Hospital-Centeric Healthtech Ecosystem」の構築

パネリスト

高仲 恵太様(伊藤超短波株式会社)
村部 義太郎様(マニー株式会社)
波江野 武様(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)

医療現場のニーズを製品開発に活かすには、医療機関との密な連携が不可欠。しかし、産学連携には、知財の取り扱いや契約の煩雑さ、医療機関側の受け入れ体制の不備といった課題が示されました。ヘルステック産業の発展には、企業だけでなく医療機関側にもイノベーションを推進するための専門組織が必要だと提言されました

パネルセッション3:社会実装に向けた研究開発の進め方

パネリスト

朔 啓太様(国立循環器病研究センター)
藤枝 俊宣様(東京科学大学)

医療機器の社会実装には、基礎研究に加え、事業化や市場を意識した視点も必要。特に、産学連携を進めるには、アカデミアと企業が対等な立場で強みを活かし、信頼に基づく協業体制を築くことが重要だと指摘されました。さらに、アカデミアには、技術シーズの創出に加え、臨床ニーズの把握や社会実装への橋渡し役も期待されました。

パネルセッション4:ヘルスケア・非ヘルスケア領域に学ぶM&A戦略

パネリスト

藤本 宏樹様(住友生命保険相互株式会社)
杉本 直樹様(ホンダ・イノベーションズ株式会社)

M&A成功には医療機関や患者ニーズを理解し、適切な技術・サービスを持つ企業を見極めることが重要とされました。また、異業種の参入には、既存企業との協業やM&Aを通じて、業界の規制や慣習への理解を深めることが必要と示されました。M&Aは新規事業や多角化の手段になる一方、PMIの失敗は価値を損なうため、慎重で計画的な実行が求められました。

パネルセッション5:企業から見たアカデミア連携に対する考え方

パネリスト

大谷内 哲也様(テルモ株式会社)
前田 明寛様(帝人ファーマ株式会社)、
市本 澄人様(ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社)

医療機器開発において産学連携が不可欠。企業はアカデミアの専門性や技術に期待しています。アカデミアには、技術の優位性だけでなく、事業化や市場適合性を示す姿勢を求めたい。また、相互理解と協力体制の構築には、オープンなコミュニケーションが重要であることも示されました。

パネルセッション6:ヘルステックスタートアップとしての軌跡

パネリスト

沖山 翔様(アイリス株式会社)
米倉 章夫様(株式会社JMDC、株式会社キャンサースキャン)

AI医療機器の開発課題や将来展望が議論されました。スタートアップの成長戦略や医療機関との連携、M&Aに関する課題も取り上げられました。さらに、医療現場・アカデミア・企業の連携を促し、イノベーションを生むエコシステム構築の重要性が確認されました。

基調講演:メドテックスタートアップのEXITを成功させるのに必要なこととは

スピーカー

Todd J. Brinton様

M.D., F.A.C.C., Corporate Vice President, Advanced Technology Chief Scientific Officer

エドワーズライフサイエンスのチーフサイエンティックオフィサーTodd氏による基調講演。自身の多様なキャリアパスと経験に基づいたイノベーション論が展開されました。Todd氏のバイオメディカルエンジニア、スタートアップ、医師としての経験、起業家としての活動、そして大学教授を経て、現在に至るまでの道のりを振り返りました。

講演の中で特に強調されたのは、「ニーズ主導」のイノベーションの重要性です。医療分野においては、患者、医師、病院、規制当局、保険会社など、多様なステークホルダーが存在します。そのため、ニーズの特定が複雑であることを指摘しました。また、イノベーションは偶発的なアイデアではなく、段階的な”プロセス”であると強調されました。そこには、バイオデザインの手法である「Identify」「Invent」「Implement」の3つのステップが重要であると述べました。

1. 医療現場の未解決ニーズの特定 (Identify Unmet Needs) 2. 問題を解決する医療デバイスの開発 (Invent) 3. 事業化を通じたイノベーションの実現 (Implement)

自身が設立に関わったショックウェーブメディカルの事例が紹介されました。そこでは、ニーズの特定から技術開発、資金調達、そして最終的な成功に至るまでの過程を詳細に語りました。

Todd氏の基調講演はYouTubeでも公開しております。ニーズ、コンセプト、チーム、イノベーションなど、自らの経験を踏まえた、示唆に富む貴重なお話しです。ぜひ、ご視聴ください。

▶️基調講演:メドテックスタートアップのexitを成功させるのに必要なこととは

ピッチセッションの様子

2つの事業から、研究者のピッチ発表が行われ、審査員による評価や参加者とのディスカッションが展開されました。

若手事業コメンテーター

中西 進(ジョンソン・エンド・ジョンソン メドテック)
ナイレン マイケル(Strategic Shores Consultants)

SU事業審査員

橋爪 克弥様(Beyond Next Ventures株式会社)
木村 亮介様(ライフタイムベンチャーズ合同会社)
阪川 洋一様(グローバル・ブレイン株式会社)
高橋 政治様(S M B C日興証券株式会社)

官民による若手研究者発掘支援事業(若手事業)

各発表テーマの市場性、競合技術との比較、今後の事業戦略などが議論の中心となりました。特に、医療経済へのインパクトや実用化における課題、企業連携の可能性などが焦点となりました。審査員や会場参加者からは具体的なアドバイスや今後の展開への期待が寄せられました。各研究開発プロジェクトの事業化、製品化、医療現場への導入、ヘルステック分野のさらなる発展に向けて、企業との連携や資金調達などの重要性が強調されました。

次世代ヘルステック・スタートアップ育成支援事業(SU事業)

SU事業に採択された研究者10名が、約8ヶ月間の検討成果をピッチ形式で発表しました。技術開発、知財、薬事、保険償還、事業戦略、海外展開戦略など多岐にわたる視点から検討された事業構想が語られました。ディスカッションでは、事業構想の具体性、市場規模、競合との差別化、実現可能性について活発な議論が展開されました。資金調達や事業提携の可能性など、今後の展開への期待が高まりました。

ネットワーキングイベント

100名を超える参加者が集まり、会場は終始熱気に包まれました。医療・ヘルスケア分野で挑戦を続ける研究者、投資家、企業等、官民学のスタートアップ関係者が一堂に会しました。それぞれ、互いの活動を共有しながら新たな連携の模索ができました。SU事業のピッチセッション表彰では、3名の研究者が表彰され、今後のさらなる飛躍に期待が寄せられました。

SU事業ピッチセッション表彰

🎉Grand Prix賞

梅木 昭秀チーム(国立循環器病研究センター研究所)*登壇者:荒川 衛
課題名「大動脈用自動吻合器の開発、事業化」

🎉Fantastic賞

高橋 悦久チーム(徳島大学)
課題名「食物アレルギーの診断・治療効果予測・効果判定支援を可能とする疾病診断用プログラム医療機器の開発」

🎉Innovative賞

馬原 淳チーム(国立循環器病研究センター研究所)
課題名「乾燥化小口径脱細胞人工血管の滅菌バリデーションと前臨床評価」

TOKYO BIODESIGN Communityでスタートアップに関わりませんか?

ヘルステック領域のスタートアップについて、起業したい方、参画を目指す方、支援者(各領域の専門家)の交流の場。国内各地のヘルステック領域の人材が東大バイオデザインを拠点に繋がり、イノベーションを実現します。

現在、SU事業採択研究者10チームのスタートアップ参画者・支援者を重点的に募集しています。
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イベントの成果と今後の展望

本イベントは、医療機器およびヘルスケア分野における産学連携とイノベーションを促進するための重要なプラットフォームとなりました。参加者からは、ネットワーキングの機会や最新の研究動向を知る機会が得られたとの声が多く寄せられました。

東京バイオデザイン部門は、今後もこのようなイベントを通じて、日本の医療機器・ヘルスケア産業の発展に貢献していく予定です。


(※)本イベントは東京大学が受託する国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 (AMED) の下記事業の一環です。

研究開発課題名:バイオデザインメソッドによるアントレプレナー型若手医療機器研究者の開発サポート

研究開発課題名:“NEXT BIODESIGN” ~次世代ヘルステック・スタートアップ育成支援コンソーシアム~

イベント運営協力:プレモパートナー株式会社(事業研究分担機関)